これからの医療を支え、変えていくのは質の高い教育だと確信しています。
患者さんの訴えを丁寧に聞き、身体診察を行う。
その上で問題点を整理し、鑑別疾患を挙げて診断に繋げる。
患者さんの一人一人の物語、社会的な背景や様々な事情を尊重し診療を行うプロセスは最も基本的な医療の土台であり、また「医のアート」と呼ばれています。
問診や身体診察、鑑別疾患や診断は最新のテクノロジーと融合することで大きく改善します。
「医のアート」をVR等の最新技術と融合し、質の高い医学教育に繋げることが私の目標です。

今後100年先も、人は「からだ」と「こころ」の両方からなる生き物です。
しかし残念ながら現在日本は、体の不調と同じくらいこころの不調について話せるかというとそうではありません。
こころが不調であると伝えると、気合が足りないのではないか、何か自分とは違う人なのではないかという反応が返ってきてしまう場合があります。
ただ最近は、著名人が精神の不調やその乗り越え方などを報告するようになっており、社会の中でも精神科に通うという選択肢がもてるようになってきていると思います。
体の不調と同じくらい、心の不調が話せるようになる国は、誰かの苦しみを、そっと受け止められる人が増えている、そして自分が不調なときには助けを求められるそんな国になっていると思います。そのような優しい社会にしていきます。

2017年から3年半、カナダでの臨床を経験した中で、日本と大きく異なったのは「働き方」でした。
それまで身を粉にして、長時間働くことが当たり前と思っていましたが、カナダで出会った様々な国で働く医師たちは、しっかり休み、しっかり働く「メリハリ」のある生活をしていて、とても充実しているように感じました。
日本でも多くの医療者が明るく元気に働ける環境を整えられるよう、2024年から始まる医師働き方改革に尽力したいと思っています。

医療技術は日々進歩して、高難度な治療や医薬品、医療機器など目まぐるしく進化しています。
その中で私達看護師は、患者さんを手と目で看る、伝統的であり裏付けを持った看護を提供します。
患者さんのもつ生きるちからを最大限に引き出して回復を促進することが、私たち看護師の看護力だと考えています。

皆さん、いのちを救うのは医者だけができると思っていませんか？
今までの医療は、医師を中心に据えた、父権主義の体制が根強く、患者さんや他の医療関係者の自立を妨げてきました。
医療の環境は大きく変化し、医師だけではなく他の専門職も含めて患者さんを支える重要性が認識されています。
チーム医療の概念は非常に重要です。
どのような疾患であっても、患者さんを取り巻く全ての職種が情報と目的を共有し、協力し合い、患者さんの状況に適切に対応する医療を提供することが必要です。
患者さんを取り巻く全ての人々の思いが一つになり、同じベクトルを向くことが大切です。
また、広い視野で考えれば、このチームには医療者だけでなく、一般の人々も含まれます。
例えば街中で誰かが倒れたら、応急救護を行うことができるでしょうし、救急車がサイレンを鳴らしていたら、道を譲ることもできます。
患者さんを救うのは、医師や医療者だけでなく、職業に関係なく、誰でも可能なことなのです。
あなたもそのチームの一員として、大切な役割を果たすことができます。